カプコン公式設定・開発秘話 センチネルナイン徹底解明

3 対バイオテロに特化したカスタムとは

アメリカ海軍特殊部隊SEALsと「SIG P226」

DSOの対バイオテロ専用ハンドガンのベースとして選ばれた「P226E2」は、アメリカ海軍特殊部隊「SEALs(シールズ)」が採用している「P226」の改良モデルにあたる。
SEALsは潜入や偵察、監視といった「斥候(せっこう)」的な任務も多く、特に水中での作戦を得意としている。SEALs隊員たちの要望を反映させたP226は、対バイオテロこそ想定していないものの、過酷な環境に対してとても堅牢に仕上がっているのだ。

対バイオテロに特化したカスタムとは

DSOが進めるセンチネル・プロジェクトの「センチネル」とは「歩哨」のことであり、「斥候」の重要な役割のひとつでもある。バイオテロとの戦いを有利にはこぶために、DSOのエージェントたちは真っ先に現場へ向かい、事件を解決に導くための捜査や諜報活動、そして組織の「目」として活動する。

DSOのように斥候的役割を担うSEALsが相棒として選んだ「P226」。その改良モデルである「P226E2」は、対バイオテロ専用ハンドガンのベースとしてうってつけのモデルと言えるだろう。

SEALsとは?

アメリカ海軍特殊部隊「Navy SEALs」のこと。「SEALs」とはSea(海)Air(空)Land(陸)の頭文字からネーミングしたものだが、その名が示すとおり、海・空・陸どの任務もこなす少数精鋭部隊だ。
彼らの任務は沿岸哨戒、空挺潜入、敵地偵察など複雑かつ多岐にわたるため、その装備を独自に開発、またはメーカーにオーダーメイドすることも多い。
SEALsが採用している「P226」も、彼らの要望でサビに強い仕様へと変更されている。

SEALs

「SIG P226E2」の基本性能と改良点

SIG P226E2

「P226E2」は、携行時の暴発を防ぐ「安全性」と、セフティ操作無しにすばやく状況へ対応できる「即応性」を両立している。また、「E2」とは「Enhanced Ergonomics」のことであり、その言葉が示すように「人間工学」を取り入れたデザインを採用し、操作性も良い。
もちろん命中精度や耐久性といった性能面でも非常に優秀なモデルだが、DSOのエージェントに支給するのであれば、「対バイオテロ」を念頭に入れたさらなる改良が必要だ。

DSOでは「汎用性、確実性、安定性」というキーワードをふまえて以下の課題を設定し、「P226E2」を対バイオテロ専用ハンドガンとして仕上げていくこととなる。

主な課題 理由と改良点
マガジンの装弾数アップ 9mmパラベラム弾がマグナム弾に比べてパワーで劣る点については、弾数で補うこととなる。マガジンにはできるかぎり弾薬を装填できるようにするべきだ。
【主な改良点】マガジン
外装パーツの腐食耐性アップ クリーチャーやB.O.W.が発する体液の影響を考慮し、パーツの劣化や作動不良を防ぐため、特に可動パーツには素材や表面処理の見直しが不可欠となる。
【主な改良点】スライド、ハンマー、トリガー、マガジンキャッチ、スライドストップ、デコッキングレバー、テイクダウンレバー etc.
操作スピードの向上 各種レバー類の操作性を上げてあらゆる操作ミスの防止に努めることは、よりスピーディな射撃にもつながるだろう。
なお、シングルアクション(※1)での発射を前提にしたセッティングを行なうこと。
【主な改良点】ハンマー、トリガー、マガジンキャッチ、スライドストップ etc.
命中精度の向上 銃を構えた際の安定感や、暗所での照準の合わせやすさという点について、さらに追求する必要がある。
特にグリップにおいては握りやすさはもちろん、すべりにくさにも考慮すること。また、クリーチャーやB.O.W.は弱点へ複数発撃ちこむことが有効であるため、連続発射の際にコントロールしやすいよう、さらなる反動の低減が必要だ。
【主な改良点】グリップ、マズル(バレル)、フロント/リアサイト etc.

※1・「シングルアクション」とはハンドガンの発射メカニズムのことで、トリガーを引いた時のハンマーの動き(アクション)が1つ(シングル)ということを意味している。トリガーを引く前にあらかじめハンマーが起きていれば、シングルアクションでの発射となる。

※ 設定協力:株式会社カプコン

※ この設定はゲーム「バイオハザード」シリーズの世界観をもとにしたフィクションです。実在の人物、団体、事件等とは一切関係ありません。

— 東京マルイ広報に聞く —P226E2をベースにした、3つのカスタム案

いよいよ「P226E2」をカスタムするということで、最初にカプコンさんへ提出したのが(A)のアイデアスケッチです。

A
B

まず「デコッキングレバーが無い」ということがP226E2からの大きな変更点でした。
これはグリップを握る位置を少し高くするハイグリップ化に備えた仕様で、銃口前に付いている「コンペンセイター」というパーツの反動軽減効果と合わせて、発射時に銃口をコントロールしやすくしようと考えていました。(コンペンセイターはトリガー前方のマウントレイルに取り付けています。)
フロント/リアサイトは、サイト越しでの「ターゲットの見やすさ」と「照準を合わせる早さ」を追求したところ、このユニークな形状になりました。
トリガーはダブルアクションでの操作性を重視したデザインになっています。トリガー後方に少しだけ「Bトリガー」(最終仕様)の面影がありますよ。

このスケッチを叩き台に、カプコンさんからも様々なアイデア(B)が出てきます。

例えば、コンペンセイターをスパイクの付いたストライクプレート化するという案。いわゆる「ストライクガン」で、スパイクそのものを武器として使うことができます。ゲーム「バイオハザード6」の「格闘」を意識したものですね。
また、グリップのふくらみ(手のひらに当たる部分)をストレートにするなど、「全体的にストレートなラインを意識したイメージ」という意見も出てきます。
A案は少し近未来的なディテールですので、カプコンさんから「もっとバイオハザードらしくて、独特ながら実際にありそうなカスタム」という要望もありました。

そこで(B)のアイデアを取り入れつつ再度提案したのが下の2案(C・D)です。
(A)とはガラリと印象が変わっています。

C D

(C)は先述のストライクガン案、そして(D)こそが「センチネルナイン レオンモデル」につながるカスタム案です。この後(D)案がどう進化していくか、まずは連載第4回「仕様決定への道程1・初期デザイン編」にてじっくりご紹介していきたいと思います。

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